食品加工では腐敗などによる変質を防ぐため、加熱殺菌が最終工程で行われています。そして、ジュース、酒、ビール、調味料や蛋白質やブドウ糖などを含んだ液体などの場合は熱交換器に流入させて短時間に所定温度まで上昇させ、その状態で一定時間(1~数分)保持し、殺菌する連続殺菌が行われています。
これらの連続殺菌/滅菌操作はバイオテクノロジーの進展により益々重要性が増しています。従来この連続式流体保持容器としては、ホールディングチューブが用いられてきましたが機器容積が大きく、保温工事の費用は膨大なものになると言う難点がありました。
すなわちホールディングチューブの場合は多数のパイプをつなぎ、長い流路を確保していますので、流路長さは膨大なものとなり、エルボで方向転換させても多くのパイプを支える架台が必要となり、殺菌ユニット全体の機器配置が困難になります。
また長いパイプの外表面に対する保温工事は膨大な費用を要するばかりではなく、工期も長期間必要でありました。
ホールディングスパイラルは高温で殺菌する連続保持容器として、スパイラル式熱交換器をベースに開発されたもので、その渦巻き状の流路は、ホールディングチューブのように流路と流路の間に無駄な空間が無く、機器のしめる嵩は遥かに少なくなります。
また、ほとんどの流路が容器内部に収納されていますので、外表面はパイプ連結・長流路のホールディングチューブとは比べようもないくらい少なくなり、保温工事の価格、納期を大幅に節約できます。
(このホールディングスパイラルは日本国特許を認められています。)
ホールディングスパイラルは弊社が長年製造販売してきたスパイラル式熱交換器をベースに開発しましたもので、その外形を図2.に、内部基本構造を図3.に示します。
図のようにホールディングスパイラルは2枚の金属板をスパイラル状(渦巻き状)に巻付けA、B、2つの流路を形成し、外周においてその2つの流路を繋ぎ、長い単一流路を形成したものです。
流体は下の平板に取り付けられたノズルより流入し、渦巻き板と下平板で構成されるA流路を渦巻き状に中心部から外周部へ流れます。そして外周部においてもう一方のB流路に流入し、A流路とは逆方向に中心部へ戻り、上の平板に取り付けられたノズルから流出します。(B流路はA流路と同様に渦巻き板と上平板で構成されています。)
ホールディングスパイラルのA,B、2つの流路は全溶接構造であり、外周部の繋がり以外では完全に分離されており、所定の流路長さ、すなわち滞留時間を確保しています。
流体は下平板のノズルから流入し上平板のノズルから流出というシンプルな構造なので、空気溜りなどのデッドスペースが無く、液の排出や水による置換が完全に行え、残留流体の腐敗を防ぐことができます。
ホールディングスパイラルには通常、ダビッドが取り付けられており、第一種圧力容器の性能検査などに(年1回の内部点検)おいてたやすく上下の平板を分解できます。
ホールディングスパイラルは以上の構造により、連続流体保持器として、ホールディングチューブにはない優れた特長を持っています。
下図4.に保持容量250Lのホールディングスパイラルとホールディングチューブを併せて示します。
表1.ホールディングスパイラルとホールディングチューブの比較
ホールディング スパイラル |
ホールディング チューブ |
|
---|---|---|
高さ :H(m) | 1.20 | 1.45 |
幅 :W(m) | 0.89 | 0.55 |
長さ :L(m) | 1.66 | 6.00 |
嵩 :V(m3) | 1.77 | 4.79 |
設置面積:(m2) | 1.48 | 3.30 |
外表面積:(m2) | 3.00 | 10.00 |
表1にはホールディングスパイラルとホールディングチューブの外表面積も併せて示しています。ホールディングスパイラルの流路と流路は互いに接し合っていますので、外表面積はホールディングチューブの僅か30%となります。しかも図から明らかなように形状が円筒形であり、ホールディングチューブが4つの180゜エルボと8個のフランジを含んでいるのに比べ、遥かに簡単になります。
このことは保温工事でのコストと納期の大幅な節約をもたらします。
ホールディングスパイラルは第一種圧力容器の適用を受ける場合が多く、年一回、性能検査のため内部を分解しなければなりません。
ホールディングスパイラルは上下の平板を取り外すだけで内部の点検が可能であります。しかもホールディングスパイラルの本体フランジにはフックボルトが使用されており、簡単に本体フランジを分解できます。
また、上下平板分解用ダビッドが標準装備として取り付けられており、玉掛け作業が極めて簡単に行えます。