SMESH熱交換器のSMESHとは次のことを意味しています。
この名の通り、特殊な攪拌素子を持ったスパイラル式熱交換器であるSMESH熱交換器の流路は、スパイラル式熱交換器を基本とし、2枚の板をスパイラル状(渦巻状)に巻き付け、細長い2つの矩形流路を形成しています。
その高温側流路と低温側流路は、全て溶接により製作されており1型、2型の2形式があります。
図1は1型、図2は2型のそれぞれ実際に使用されているSMESH熱交換器を示したものであり、熱交換器の容積(嵩)の割りに伝熱面積は極めて大きくコンパクトであります。
高粘度側流路には、特殊な攪拌素子を巻込むように設置し、強制的に流路中央の流体を伝熱板へ移動させ、高粘度による層流を打ち壊し、乱流伝熱のような高性能伝熱を達成しています。
スパイラル式熱交換器を基本にしており細長い矩形流路は隙間が小さく、しかも高粘度側流路の特殊な攪拌素子は、効果的に流路中央の流体を伝熱板へ移動させ、乱流伝熱のような高性能伝熱を達成しています。
加えて、その特殊な撹伴素子は、伝熱板に巻込むように設置されていますので、そのフィン効果により、伝熱面積が増加し、より伝熱能力が向上します。
スパイラル式熱交換器を基本にしており、容積効率(伝熱面積/機器容積)が極めて高いので、設置面積および機器容積は他の熱交換器の数分の一となります。
このことは機器配置を容易にし、イニシャルコストの削減ばかりではなく、配管工事コストの削減をもたらします。
SMESH熱交換器は高伝熱性能、および容積効率の高さにより、高粘度側とユーティリティ側流路の内容積は、他の熱交換器の1/10程度となります。その結果、コントロールのムダ時間(流体が流入してから流出するまでの時間)が短くなりますので、温度制御性が飛躍的に向上します。
SMESH熱交換器は、前述しましたように種々の特長があり、高粘度流体の熱交換に多数使用されており、プラントコストの削減や製品精度の向上など、さまざまのメリットをもたらしています。以下その適用例の一部を示します。
樹脂は製品となる前に成型されなければなりません。その成型精度は年々厳しくなっており、成型時の物性、特に粘度を厳しく管理する必要が高まってきています。
樹脂の粘度は、温度に大きく依存しますので、射出成型機へ流入する前に熱交換器を設け、樹脂の温度コントロールが計られていますが、通常の熱交換器では制御精度に大きな問題がありました。
SMESH熱交換器の内容積は非常に少なく、高粘度側および低粘度側の滞留時間が非常に少ないので、温度制御性は従来の多管式熱交換器に比べ数倍も優れています。
図3は、2液性の樹脂の射出成型材の温度コントロールに用いられたSMESH熱交換器を示したものであり、製品の成型精度は大きく向上しました。
ほとんどの高分子樹脂は、反応缶(オートクレーブ)で生産されています。その反応缶は、適切な攪拌と高温、高圧下での運転が要求され、極めて高価であります。
反応が終了した樹脂は、ジャケットなどで冷却されたのち缶外へ排出されますが、反応缶の運転時間にしめる「冷却時間」の比率が通常極めて高くなります。
図4は、SMESH熱交換器を反応缶抜出し用熱交換器として用いた例を示したものです。
伝熱効率も伝熱面積も小さいジャケットによる缶内冷却に代わり、伝熱効率の高いSMESH熱交換器を用いることにより、缶内冷却時間をなくし、反応缶の稼働率を倍程度向上させ、結果的に高価な反応缶の増設と同じメリットをもたらしました。
高分子化合物をエンドユーザーに納入する場合、温度や粘度の厳密な管理が要求項目として挙げられることがあります。
これは高分子化合物が高粘度であることが多く、温度や粘度が異なる製品を受け入れた時、エンドユーザーでは加熱や冷却に多大のコストと労力を要するためであります。
高分子化合物は、タンクローリーで出荷されることが多く、その操作はバッチ式であり、流れは間欠的になりますので、応答性の良い熱交換器でなければエンドユーザーの要求を満たすことは困難です。
図5は、高分子化合物の出荷温度調節器として用いられているSMESH熱交換器を示したものです。その伝熱性能の高さと内容積の少なさによる優れた応答性により、十分なコントロール能力を示しています。
SMESH熱交換器は、高粘度流体用に開発された熱交換器であり、伝熱板の間に設置された特殊な攪拌素子の働きにより高性能伝熱を達成しています。
しかしながら、高粘度流体は粘度が流動状態により変化する非ニュートン流体であることが多く、当社では、安全性を考え試験機を用意し伝熱テストの準備を整えています。